おすすめ!一気読みしてしまう感動完結漫画「親なるもの断崖」を読んだ感想
昭和初期、まだ田舎の貧しい農家の娘が人身売買されていた時代。
青森から北の海を渡って、室蘭の幕西遊郭に身売りされた4人の少女達の運命が描かれる。
最年長の松恵は、着いたその日に生娘のまま客を取らされ、首を吊ってしまう。
松恵の妹・梅は、姉の分まで借金を背負うことに。
そして11歳で自ら進んで体を売るようになり、その美しい器量と体で、やがて遊郭で一番人気の女郎となるが...
もう一人の美少女・武子は、大人の色気を見込まれ、芸妓として厳しく仕込まれる。
武子は持ち前の才覚と強(したた)かさで、やがて幕西一の人気芸妓に上り詰めていく...
一方、不器量な道子は、芸妓にも女郎にもなれず、下働きを命じられる。
その後、念願の女郎になるも、「地獄穴」と呼ばれる劣悪な環境で、性病に罹って客を取れなくなり...
この4人の少女達の過酷な生活が実にリアルに描かれ、読んでいて胸が締め付けられます。
また奈落の底辺から這い上がっては落ち、また這い上がっていく、そのたくましく生き抜いていく姿に心打たれます。
そうした少女達の壮絶な人生に軍国主義の嵐が吹き荒れ、さらに激動の時代が人々を狂乱の渦に巻き込んでいくのです。
本作「親なるもの断崖」、「このマンガがすごい!2016」にランクインされたとのことですが、
いやホントに文字通り、この漫画凄い!です。
作風はものすごく重くてダークで残酷で、胸が苦しくもなるんだけど、読み出すとページを進める手が止められなくなり一気に読んでしまいました。
なぜなんでしょうか?
やはり、ヒロインたちが困難や試練にどう立ち向かって乗り越えていくのかが見所(読み所)なんですね。
また、禁断の恋に落ちるラブロマンス的要素もあって、わくわくドキドキのストーリー展開が、読み手を惹き込んで中毒症状を起こすのです(たぶん)。
こうした人間の尊厳が踏みにじられていた時代が踏み台となって、現在の繁栄があるんですね。
私たちが今、不自由なく豊かに暮らせるのも、過去の数限りない人々の血と汗と涙の礎(いしずえ)があってこそなのだと思いました。
「親なるもの断崖」を通して、そうした先人たちの慟哭に、ひととき身を傾けてみるのもいいかと。
人間の罪深き業に心苦しくなる部分もありますが、最後は読後感も良く、言い知れぬ感動が残ります...。
読み出したら止まらない・中毒性が高い・一気読み必至!
昭和の暗部を描いた壮絶歴史・感動漫画!
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「親なるもの断崖」作品概要・あらすじ
作者:曽根富美子
ジャンル:少女マンガ
出版社:出版
巻数:全2巻完結(1部・2部)
▼「親なるもの断崖」第1部のあらすじ▼
あそこは地獄ですだよ、地獄穴ですだ!
昭和2年4月、寒い春。
北の海を渡り、4人の少女たちが北海道室蘭の幕西遊郭に売られてきた。
松恵16歳。その妹・梅11歳。武子13歳。道子11歳。
松恵は着いたその日に客をとらされ、首を吊る。
奈落の底で、少女たちの壮絶な人生が始まった...
渾身の力を振り絞り闘い続け、地獄の中でも生き続ける少女達を描いた第1部。
▼「親なるもの断崖」第2部のあらすじ▼
生きろ!生き抜いてゆけ! 次の時代を生み出すのは女性だ!
昭和11年3月、室蘭の赤い雪が荒れ狂い続けるなか、
白無垢姿で遊郭を抜け出したお梅は、母になった。
しかし、母と子の穏やかで幸せな時間は長く続かなかった。
周囲の好奇と侮蔑にさらされ、お梅はある日姿を消す...
太平洋戦争は激しさを増し、
残された子・道生(みちお)は一人、母の姿を求めながら、
平和とは、人間の尊厳とはなにかを問い続ける。
軍国主義の嵐が吹き荒れ、激動の時代を生き抜く母と子を中心に描いた第2部。
「親なるもの断崖」ネタバレ・ストーリー
第1部のストーリーを簡単にご紹介しておきます。
※注意! 以下、ネタバレを含みます。
昭和2年4月、青森の貧しい農村の娘、松恵(16歳)、その妹の梅(11歳)、13歳の武子(13歳)、道子(11歳)の4人は、北海道室蘭の幕西遊郭「富士楼」に売られてくる。
遊郭に着いた4人は「富士楼」の女将・お滝と面会。
松恵と梅の姉妹は「器量良しの姉妹」、そして大人びた印象の武子は「幕西一の芸妓になれる」と太鼓判を押される。
しかし、容姿が劣る道子は「芸妓は無理」と断言され、下働きを命じられる。
その日の夜、女将の独断により年長の松恵は早速客を取る事になったが、
生娘のまま客を取らされた松恵はショックで自殺してしまう。
松恵には言い交わした許婚がいて、遊郭に売られる前にその男の元へ嫁ぐはずだったのだ。
松恵の分も借金を背負った梅は「夕湖(ゆうこ)」という源氏名で、11歳で自ら進んで体を売るようになり、人気の女郎となる。
昭和4年2月、半玉としての修行を続けていた武子は、同じ青森出身の船乗りと出会い駆け落ちするも失敗。
武子はその男との間で新しい命を宿していた。
しかし2ヵ月後、女将は赤子を取り上げるとその場で殺害してしまう。
その後も武子は、先輩芸妓からのイジメや厳しい稽古を、持ち前の気の強さで乗り越え、幕西一の人気芸妓になっていく。
一方、下働きとして奮闘していた道子は、女郎になる夢を諦めきれずにいた。
その後、遊郭はずれの格下店に転売され、念願の女郎になった道子。
だがそこは「地獄穴」と呼ばれる劣悪な環境で、性病に罹った道子は客を取れなくなり、生きる屍のような有様となっていた。
その頃、梅は医師の息子で反政府運動に傾倒する青年・中島聡一と恋に落ちていた。
しかし聡一は特高に終われる身になって、梅は彼と逃亡することを決意。
梅は道子も連れ出し、足抜けを図るが、逃亡は失敗に終わる。道子は殺害され、二人の仲は引き裂かれたのだった。
梅は「富士楼」へ連れ戻され、隠し部屋で質の悪い客を取らされることになった。
月日は経ち、昭和9年8月。梅は18歳になっていた。
彼女は3年前から、足抜けの際に知り合った日鉄社員・大河内茂世から「妻として」身請けを申し込まれていたが、聡一への想いから決心できずにいる。
8月29日、海軍連合艦隊が室蘭港へ入港し、室蘭の街中がお祭り騒ぎとなっていた。
その日、幕西一の人気芸妓「九条」として有力な旦那・大林を得ていた武子は、「富士楼」を乗っ取る。
一方、花嫁姿の梅を馬に乗せ、嫁入り道中する茂世はこのお祭り騒ぎを苦々しく見つめ、「鉄は平和産業のためのものだ」とつぶやくのだった...
...以上、情景描写は省き、ストーリーも登場人物もかなり端折りました。
まぁこれだけサクっと読んでも、壮絶な物語であることを感じていただけるでしょう。